遺言+⑤遺言執行者の代理人
2017.11.09
遺言執行者の職務を包括的に第三者に行わせることは原則として禁止されており、遺言によってあらかじめ許されている場合か、やむを得ない事情がない限り認められません。しかし、個々の問題について弁護士や、司法書士、税理士等の第三者を遺言執行者自身の代理人として利用することは当然に認められます。
◇遺言執行者の復任権の制限
遺言執行者の職務は極めて一身専属的なものであり、遺言執行者自らが職務に当たるのが原則です。そのため、民法は遺言執行者に「やむを得ない事由」がある場合又は遺言によって許されている場合に限って復任権を認めています。
この「やむを得ない事由」とは、例えば遺言執行者自身が病気になったり、特に専門的な知識が必要な場合が考えられます。
もっとも、遺言執行者自身が事務処理をするうえで、自己の責任で履行補助者を使用することは特に問題はありません。あくまでも全面的包括的に第三者に職務を行わせることが問題です。
◇第三者に職務を行わせた場合の責任
まず、遺言によって復任権が認められている又はやむを得ない事由により遺言執行者が復代理人に職務を遂行させた場合、復代理人の選任や監督に過失があった場合にのみ責任を負うことになります。ただし、被相続人の指名したものに代行させた場合には、指名されたものが不適任または不誠実であることを知って相続人に通知しなかったり、解任を怠った責任のみ負います。
次に、履行補助者を使用した場合には、遺言執行者は履行補助者の故意過失について責任を負います。
最後に、遺言でも認められておらず、やむを得ない事由もない場合に、遺言執行者が復代理人を選任した場合、復代理人の故意過失を問わず、復代理人に職務を遂行させなかったら生じなかったであろう一切の損害について遺言執行者が責任を負うことになります。
◇実務+α
遺言執行者として就任を承諾した場合には、第三者を使用する場合でも責任を負うことになることもあるため、慎重な判断が求められます。