遺言+②遺言執行者の選任手続き
2017.10.11
遺言執行者がないとき、又はなくなった時は、家庭裁判所は利害関係人の請求によって遺言執行者を選任することが出来ます。
1 遺言執行者がないときとは以下のような場合です。
①遺言者が遺言執行者を指定しなかったとき
②遺言執行者の指定の委託を受けたものが委託を辞退したとき
③指定された遺言執行者が欠格者であるとき
④指定された遺言執行者が就職を承諾しないとき
2 遺言執行者がなくなったときとは、遺言執行者につき、死亡、失踪、解任、辞任、資格喪失などの事由が生じた場合です。
3 家庭裁判所への申立て方法
(1)利害関係人
利害関係人とは、相続人、受遺者、受遺者の債権者、などの遺言の執行に関して法律上の利害関係を有する者です。
(2)管轄
管轄は相続開始地、つまり遺言者の死亡の住所地の家庭裁判所です。
(3)費用
申立て費用は収入印紙800円です。その他に予納郵便切手が必要です。
(4)申立書
裁判所で公開されているひな形です。
(5)添付書類
添付書類は、遺言者の除籍謄本、遺言執行選任候補者の住民票、遺言書の写しです。
4 審判
申立て後、審判の前に家庭裁判所は遺言執行者の候補者に意見を聞き、就職の意思及び適格能力の有無を確認します。
選任審判が降りると、遺言執行者に告知されます。告知は審判書謄本の交付によって行われます。
選任の審判に不服申し立ては出来ませんが、申立て却下の審判に対しては、利害関係人は2週間以内に即時抗告を申し立てることが可能です。
5 実務上の問題点
①特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言で、遺言執行者の指定がないときに選任申立てがあった場合、従来は選任が必要ないとされていました。
しかし、近年の判例は、登記実務との関係で、相続人の1人又は第三者が当該不動産につき不実の登記を経由するなど、遺言の実現が妨害される事態が生じる場合には、遺言執行者の選任が認められるとしています(最判平11.12.16判時1702.61)。
②遺言書が検認前の場合でも、それだけをもって遺言執行者の選任が出来ないとはされていません(東京控決明38.82.3新聞308.10)。
③遺言の無効が外見上明白なときは、選任申し立てを却下することが出来るとされています(大阪高決昭49.6.6 家月27.8.54)。
④遺言執行者の員数について、1名と限定はされないが、増員する申し立ては必要性が無ければ却下される可能性があります(大阪高決昭32.2.16家月9.2.36)。
+α
申立ての際に、遺言執行者の候補者を推薦した場合でも、裁判所がその候補者を選任するかどうかは裁判所の裁量にゆだねられ、推薦した候補者が遺言執行者として選任されないことはあります。