[遺言]⑥遺言の変更と撤回
2017.04.21
遺言者は、生きている限りいつでもその遺言を撤回したり変更したりすることが出来ます。
遺言をした後で周囲の環境や財産の状況が変わるのは当然です。そのような場合にも遺言を自由に撤回・変更出来ることで安心して遺言を作成することが出来ます。
なお、「撤回や変更をしない」とする遺言をしても、無効となります。つまり撤回・変更する権利を放棄することはできません。
遺言を撤回する方法
遺言の全部または一部を撤回する場合、遺言者は新たに遺言を作成し、その遺言で以前作成した遺言の全部または一部を撤回する旨を内容にすれば前の遺言は撤回したものとみなされます。
また、自筆証書遺言の場合、自分で書いた遺言書を故意に破棄すると撤回したとみなされます。
公正証書遺言の場合には、原本が公証役場に保管されているので作成者本人が遺言を破棄しても撤回になりません。公証役場ではそもそも原本を破棄してもらえないので、撤回する場合は新たに遺言書を作成し撤回するしかありません。
遺言を撤回する場合、遺言の種類を問わず可能です。公正証書遺言だから公正証書遺言でしか撤回出来ないということはありません。この点は撤回に限らず、変更でも同様です。
なお、遺言作成者が生前に、遺言で記載されている財産を売却したり、贈与したりすると、その処分された財産に限り撤回したものみなされます。
遺言の内容を変更する方法
作成した遺言を変更したい場合、新たに遺言書を書きなおすか、作成した遺言書自体を変更する方法があります。遺言書が自筆証書遺言で、変更部分が軽微な場合には直接その遺言の文章を変更できます。変更方法は、遺言書の変更したい部分を示し、変更した旨、変更内容を書いて、署名し、その変更の場所に印を押す必要があります。
遺言書(例)
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Aに下記財産を相続させる。(訂正前)
↓
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Aに下記財産を相続させる。(訂正後) 本行1字削除
㊞B 1字加入 B㊞
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変更方法に不備があると変更は無効となります。変更が無効の場合は変更は無かったものとなり、変更前の内容となります。
そのため、変更が多い場合には遺言書自体を書き直した方が無難です。実際に、自筆証書遺言書の変更訂正をして、その方式が間違っているために変更が無効になっていることが多々見受けられます。
なお、公正証書遺言を変更する場合は、遺言を新たに書き直す必要があります。公正証書遺言の原本は公証役場に保管されており、それを変更するということが出来ないためです。
結びに
1つしかない遺言が不備により無効となると法定相続分通りに相続されますが、遺言を2つ以上書いて遺言の撤回や変更をした場合、不備により無効となると前の遺言が有効になってしまいます。
撤回や変更をしたせいで、何も遺言を作成してなかった時よりも相続で揉めてしまうことになれば本末転倒です。
遺言の撤回・変更をする場合には安心で確実な公正証書遺言をおすすめします。