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不在者の財産の管理~新家事法146条~

2024.03.28

新家事法146条ではどのような改正がされたのかご紹介します。

「不在者財産管理人」とは

まず「不在者財産管理人」とは、行方不明になっている相続人がいる際に、その相続人の財産を管理する人物の事です。

通常であれば遺産分割協議は、相続人全員で協議していきますが、相続人の中に行方不明者がいれば遺産分割協議を行うことが出来ません。その際に「不在者財産管理人」を裁判所に申立を行い選任されれば、代わり遺産分割協議に参加し手続きを進めていくことが可能となります。

現行法では、不在者財産管理人は不在者の財産を管理する過程で生じた金銭があれば、不在者に金銭を渡すべきですが、行方不明の為その引き渡しが困難となります。しかし、その処理方法について明確な規律がない為、不在者財産管理人が金銭の管理を継続しなければならないケースがあり、合理性に欠けるとされていました。

改正の内容

ではどのような部分が改正されたのでしょうか。

「不在者財産管理人は、不在者の財産の管理、処分、その他の事由により金銭が生じたときには、不在者のために、その金銭を不在者財産管理人を選任した裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の管轄区域内の供託所に供託することが出来る。」

改正により不在者財産管理人は金銭を供託出来るようになりました。

今までは不在者財産管理人が金銭を供託できるのか明確ではありませんでした。一般的に不在者の行方が分かるまで不在者財産管理人の報酬に財産が充当され続けます。不在者の財産を供託出来れば、不在者財産管理人を選任する必要がないので、管理人に報酬を支払う必要もありません。

上記の問題を解決するために、供託について新たな規定が設けられました。

それとともに、新家事法では不在者財産管理人が管理すべき財産の全てが供託され、管理すべき財産がなくなったときは、不在者財産管理人の選任の処分の取消事由である「管理すべき財産がなくなったとき」に該当することを明示したことにより、不在者財産管理人の業務は終了とすることが可能とされます。

改正前であれば、相続した金銭が全て無くなるまで、不在者財産管理人の業務は続きましたが、改正後は遺産分割協議後に不在者財産管理人が金銭を供託すれば業務は終了となります。

不在者の金銭が供託出来るようになれば、不在者財産管理人の業務が短くなる為、その分報酬も少なくなり、財産が残る可能性が多くなるという事です。
 

文責:松井