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遺贈者に新たな遺産が発見された場合(清算型遺贈)

2024.02.26

遺産分割未了の不動産が発見された!

遺産を処分したのちに、その処分金を受贈者に対して引き継がせる旨の遺言(清算型遺贈)が残された場合、当該遺言で指定された遺言執行者が、預金の払出や株式等有価証券の換価処分を行い、不動産については売却をして、得られた金銭から負債等をすべて差引き、受遺者はその残りの金銭を受け取ることができます。近年、遺言者がNPO法人や病院・地方公共団体等の法人に遺贈を希望する場合によく利用される遺言となっています。

弊所でも、弊所が遺言執行社となりボランティア団体などに遺贈する清算型遺贈の事務を承ることが多くあります。その中で、遺贈者が相続人となっている遺産分割未了の不動産が発見されたことがありました。遺言執行者の職責は、遺言者が有したすべての遺産を換価処分して受贈者に引き渡す事ですから、遺贈者が相続人として受け取る権利を有している遺産についても、何らかの処分を行う必要があります。では、具体的にどのような手続きをすればよいでしょうか。

 

清算型遺贈の場合の登記

遺贈者名義の不動産を処分する場合、売買による所有権移転登記を入れる前に、相続を原因として相続人に移転登記を入れなければなりません。すでに死亡している遺贈者から直接売主に権利が移転することは実体と異なるからです。もっとも、遺産を受取る事のない相続人に登記について協力を求めることは現実的ではない事から、相続登記や売買による所有権移転登記は遺言執行者が直接申請を行う事ができます。

そうすると、遺産分割未了の不動産についても、遺言執行者が処分を行い登記手続きができるように思えます。もっとも、一次相続の被相続人名義の不動産を遺贈者名義にするにはどのような方法があるでしょうか。

 

遺言執行者が遺産分割協議を行えるか

遺産分割未了の不動産があり、相続人が複数名いる場合、相続人間で遺産分割協議を行って誰が相続をするかを決める場合がありますが、その相続人の一人がすでに死亡している場合には、その相続人の相続人(二次相続)が一次相続の遺産分割協議に参加できます。相続人は、二次相続の被相続人の権利を包括的に相続するためです。

清算型遺贈であっても、受遺者は包括受遺者と解され、相続人と同一の権利を有するため、遺贈者が有する第一相続の相続人として遺産分割協議を行う権利を引き継ぎます。したがって、二次相続における清算型遺贈の受贈者は一次相続の遺産分割協議に参加できます。この点、遺言執行者は相続人ではないので、遺産分割協議の当事者とはなれません。もっとも、受遺者の許可を得て受遺者の代理人として参加する事は可能です。こういった方法で遺産分割協議が整えば、不動産を受贈者名義とすることができそうです。

 

持分を入れても処分が難しい

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(民法1012条)とされています。したがって、遺言者の権利保全のため遺産分割協議に基づく遺贈者名義の相続登記を申請したり、法定相続分にて遺贈者の持分を登記したりすることができると解されます。

遺産分割未了の不動産がある場合、相続から長い時間が立って相続人が多くなる場合があり、法定相続分は細かな持分となってしまう可能性があります。そうなると、一般的にはその持分について第三者に売却する事は簡単ではありません。弊所が行なった事案では、持分を他の相続人に買い取ってもらうこととし、換価処分を行う事ができました。

 

おわりに

近年、清算型遺贈の遺言は増加傾向にあり、本件のように、遺贈をめぐる新たな問題もでてきています。遺言執行者の権限は民法改正でより強化されていますが、できないこともありますので、場面に応じて問題を精査し対応することが重要です。

弊所では、遺贈に関しても数多くの案件を経験しておりますので、お気軽にご相談頂ければと思います。

文責 桃田