危急時遺言の使い方
2022.06.13
前書き
危急時遺言とは、特別の方式によって緊急時に認められる遺言です。遺言は通常は三種類(公正証書遺言等)ですが、疾病等で死期が迫っている遺言者が通常の方式で作成することは困難なため、口頭で遺言をし、証人がそれを書面にする遺言です。
危急時遺言とは
民法第976条(死亡の危急に迫った者の遺言 通称:危急時遺言)
疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
二 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
三 第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
四 前三項の規定によりした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
五 家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。
分かりやすく説明
作成順序を分かりやすくすると
(1)証人3人以上の立会いの下、内1人に遺言の趣旨を口頭で説明します。
(2)説明を受けた証人がそれを筆記します。
(3)筆記した証人が内容を遺言者及び他の証人に読み聞かせ又は閲覧させます。
(4)各証人が筆記の正確なことを承認した後、遺言書に住所氏名を記入し押印します。
(5)遺言から20日以内に家庭裁判所に確認してもらわないといけません。しかも必ず確認してもらえるわけではないので、録音や録画、医師の診断など状況証拠を残しておく必要があります。
作成のポイント
危急時遺言を作成するポイントは
1 病気の方がいれば危急時遺言という選択肢を認識しておく
いざというときは動転して思いつかないものです。日ごろから意識し準備が必要です。
2 とにかくスピードが命
意識がなくなってしまっては作成することができません。危ないと思ったら即座に作成しましょう。
3 経験豊富な専門家へ依頼する
口できいた内容を文書にする必要があります。専門家に任せた方が無難です。
後書き
弊所では危急時遺言の作成を承っております。作成の実績もございますが、余裕を持ってのご依頼をお勧めいたします。基本的にはガンなど意識のはっきりしている方向けです。認知症では中々作成は難しいですが、状態にもよりますのであきらめずにご相談ください。
文責:庄田