法務局の「自筆証書遺言」保管制度 その②
2021.11.08
はじめに
前回制度の概要と、制度の中で遺言者ご本人様ができることを中心にお話しさせていただきました。
今回は遺言者が亡くなられた後、法務局の遺言書保管制度で関係相続人の方々が利用できることをご紹介いたします。
ここでの関係相続人は相続人,受遺者・遺言者執行者等の方や、その方の親権者・成年後見人等の法定代理人を指します。
法務局の保管制度でできること(関係相続人)
■関係相続人ができること
・遺言書保管事実証明書の交付請求
・遺言書情報証明書の交付請求
・原本や画像データの閲覧 等
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遺言書保管事実証明書とは
遺言書の保管有無について知りたい場合に利用するものです。
内容として、遺言者の遺言が保管されているかどうか、保管されている場合はその遺言書を作成した年月日、遺言書が保管されている法務局(遺言書保管所の名称)及び保管番号が記載されています。
証明書は全国どこの遺言書保管所でも交付請求可能です。
遺言書情報証明書とは
保管されている遺言書の内容を知りたい場合に利用するものです。
書類の内容として、保管申請がいつされたのか、遺言書の内容はどんなものであるのかなどを確認することができます。
証明書は全国どこの遺言書保管所でも交付請求可能です。
この遺言書情報証明書は、相続登記時や銀行手続きの際に遺言書原本の提出が必要とされている場合に代わりの書類として使用することができます。
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関係相続人の請求に関して、便利な通知制度もあります。
それは、一人の関係相続人が遺言書の閲覧を行ったり遺言書情報証明書の交付を受けた際には、その他全ての関係相続人等に対し、遺言書保管官が「遺言書が遺言書保管所に保管されていること」をお知らせするというものです。
これにより関係相続人全員が遺言書が存在していることを知り、相続手続等をより早く開始することができるようになっております。
制度利用の注意点
最後に、この制度を利用するにあたってご注意いただきたい点を挙げさせていただきます。
①申請に必要な書類は事前に準備しておいた方がよい
遺言書、申請書、本人確認書類、必要添付書類の準備ができていない場合、申請完了までに日数を要することもあります。短期間で終わらせたい場合は事前にしっかり準備をしておきましょう。
②各種書類申請に手数料が必要
保管申請、閲覧請求、証明書交付請求等、各種申請には手数料がかかります。
納付は収入印紙によって行います。
③あくまで外形的な確認となるので、遺言書自体の有効性は保証できない
遺言書の作成、内容については相談を受け付けていません。
形式等について不明点がある際は、事前に専門家に聞いておくことをおすすめしています。
④記載した氏名、住所などに変更があった場合は必ず届け出る必要がある
各種通知制度を利用する際に必要な情報です。
こちらの届出はどの遺言書保管所でも行うことができ、郵送でも可能です。
当初の自筆証書遺言では遺言書がどこにあるかさえわからないというケースも発生していましたが、保管制度を活用することで、「遺言書があるのかないのか、どこにあるのか」という心労でご遺族の大事な時間を消費してしまうことがなくなります。
ぜひご検討ください。
(文責:坂本)