法務局の「自筆証書遺言」保管制度 その①
2021.10.25
はじめに
皆様は、法務局で「自筆証書遺言」を保管してもらえる制度が令和2年7月10日からスタートしていることをご存じでしょうか。
自筆証書遺言は自書能力さえあれば他人の力を借りることなく作成することができる、手軽で自由な遺言の方式です。
しかし、その手軽さというメリットがある反面、他の遺言方式である公正証書遺言や秘密証書遺言と異なり、以下のデメリットがあります。
【自筆証書遺言のデメリット】
・遺言書の紛失、忘失が発生しやすい
・そもそも遺言書自体が存在しているのかさえわからないケースもある
・本当に本人が書いたものであるのか不明瞭なケースもある
・面倒な家庭裁判所の検認が必要 など
このようなデメリットをなくし、自筆証書遺言をより手軽に活用できる制度が法務局による自筆証書遺言書保管制度です。
【自筆証書遺言書保管制度のメリット】
・遺言書の紛失、廃棄、隠匿、改ざんを防ぐことができる
・原本と合わせて画像データでも遺言書が保管され、長期保管が可能に
・家庭裁判所の検認が不要になる
・各関係相続人に遺言書が存在する旨を通知してくれる制度もある など
今後、2024年に相続登記が義務化される見通しです。
法務局の自筆証書遺言書保管制度を活用することで、遺言書をもとに相続登記までの手続きをよりスムーズに進めることができ、問題となっている所有者不明の土地等を減らす効果も期待できそうです。
法務局の保管制度でできること(遺言者)
■遺言者ご本人様ができること
・遺言書の保管申請
・遺言書の原本や画像データの閲覧
・遺言書保管申請の撤回請求
・死亡時の関係相続人への遺言書保管通知事前申請 等
まず、遺言書の保管申請は原則遺言者本人が行います。
保管を希望する法務局の事前予約を取り、遺言者自らが出向く必要があります。
遺言書と合わせて必要書類を提出し、申請完了の証明として法務局より保管証が付与されます。
この保管証によって遺言者が遺言書を作成していること、内容は閲覧可能となるまで秘密とされていることが証明され、対象の遺言書をスムーズに特定するのにも役立ちます。
保管証は再発行不可ですので、その点ご注意ください。
また、この制度の利用に回数制限なく、何度でも遺言を書き換えることができます。内容が抵触する場合は作成日が新しいものを有効とします。
気をつけていただきたい点として、書き換えたい場合は必ず、すでに遺言書を預けている法務局に申請を行ってください。
預けられた遺言書は、原本と併せて画像データでも保管されます。
原本は遺言者の死亡の日から50年間、画像データは150年間保管され、長期に渡って遺言書の有無や詳細を確認することができます。
さらに遺言者は生前に申し立てることで、死後に法務局を介して指定の関係相続人に遺言書がある旨を通知することができます。
次回は相続人の死亡後に関係相続人ができることと、利用時の注意点についてお話しさせていただきます。
(文責:坂本)