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夫婦のどちらかが亡くなった時に自宅に住み続けるために(1) ~遺言書に『配偶者居住権』を記載する

2021.09.27

配偶者居住権

配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなった場合、残された配偶者が亡くなった人が所有していた建物に、亡くなるまで又は一定の期間、無償で居住することができる権利です。

これは、残された配偶者がそのまま住み続けられるよう、居住権を保護するために認められた権利です。令和2年4月1日に施行されたので、令和2年4月1日以降に亡くなられた方の相続から設定できます。

相続財産の大部分が自宅不動産であるような場合、配偶者がそこに住み続けるために自宅不動産を引き継ぐと、自宅不動産の評価が高いためにほかの財産(預貯金など)を取得する額が少なくなってしまうケースがあります。

そのような場合、配偶者居住権と配偶者居住権のついた所有権「負担付所有権」とをわけて取得させることで、預貯金などの財産も取得させることができます。

 

具体例

具体例で説明します。

被相続人:夫

相続人:妻と子

相続財産:自宅不動産3000万円 預貯金2000万円

法定相続どおりにわけ、妻が自宅に住み続ける場合には、子に500万円支払わなければなりません。その場合、今後の生活費が不足になる可能性もあります。

このような場合に、妻が「配偶者居住権」、子が「負担付所有権」を取得すれば、仮に配偶者居住権が1000万円の評価だとすると、

妻:自宅不動産(配偶者居住権)1000万円、預貯金1500万円

子:自宅不動産(負担付所有権)2000万円、預貯金500万円

となり、残された妻は自宅に住み続けることもできますし、生活費を確保することもできます。また、妻が亡くなった場合には、配偶者居住権は消滅し、子が同不動産の所有権を持つことになります。

デメリットと登記について

ただし、途中で売却ができない、「配偶者居住権」を解約や放棄した場合には子に贈与税がかかる、配偶者居住権の価値の評価には不動産鑑定士など専門家の評価が必要になる、などのデメリットもありますので、今後の生活などをよく考えながら検討した方がよいでしょう。

 

配偶者居住権は以下の要件を満たしてれば権利として発生します。

  1. 残された配偶者が亡くなった人の法律上の配偶者であること。(内縁の配偶者はふくまれません)
  2. 配偶者が、亡くなった人が所有していた建物に、亡くなった時に住んでいたこと
  3. ①遺産分割、②遺贈、③死因贈与、④家庭裁判所の審判のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと

この権利は、登記をする必要があります。亡くなった人が建物を配偶者以外と共有していた場合には対象とならない点には注意しましょう。配偶者居住権の登記に関して、司法書士法人神楽坂法務合同事務所にもコラムがありますので、こちらをご覧ください。

 

次回は、遺言書の書き方についてご説明します。

(文責:高橋)