遺言信託が必要な人、必要ない人
2021.03.01
前書き
昨今、信託銀行や都銀が力を入れている遺言信託。遺言信託とは一体どういった商品なのか、本当に必要なものなのか、元信託銀行勤務の司法書士庄田が赤裸々に綴っていきます。
遺言信託とは
遺言信託とは、遺言書の作成から保管、遺言執行までを信託銀行が引き受けるサービスのことです。
流行りの民事信託や家族信託とは全く何の関係もありません。
遺言書を信じて託すから遺言信託、誤解を招きそうなネーミングですが、既に定着している感があります。
遺言信託の費用は
各行違いはありますが、作成時に定額で30万円前後、相続発生時には遺言執行費用として最低100万円から財産額に応じて~%と定めているところが多いです。
なお、注意点として、税務申告や登記申請など各士業の専門分野は銀行では行うことが出来ず、外注に出すことになります。税理士や司法書士に対する報酬は別途掛かるということです。
遺言信託が必要な人
さて、かなり高額な費用の発生する遺言信託ですが、どういった人に必要なのでしょうか。私見ですが、資産が10億円を超えるような資産家の方は、依頼するメリットがあると考えています。
そのレベルの資産家の方はなによりも信頼感を大切にされますし、数百数千万円程度の費用であれば気にせずに払える方が多いからです。
遺言信託が必要ない人
逆に遺言信託が必要ない方はどのような方でしょう。
まず、①そもそも資産がそれほど多くない方
②遺言に財産以外のことを書きたい方(身分行為)
③財産が多くとも株や預貯金、金融資産ばかりの方
④家族仲が悪い方
以上4パターンがあります。
①は当然として、②は弁護士に依頼すべきですし、③は簡単な手続きだけで高い費用を払うことになります。
④は相続発生時に揉めると銀行は遺言執行者を辞任してしまうからです。
何故銀行は遺言信託を勧めるの?
さて、銀行は何故これほど遺言信託に力を入れるのでしょうか(とあるお宅では毎週銀行の営業が来て困っていました)。
理由は主に2点あります。一つは、長引く低金利のせいで銀行の主力業務である貸付業務が儲からなくなってきたために、手数料商売である遺言信託で儲けたいこと。
もう一つは、遺言信託をしてもらうことでその人の資産が全てわかり、他行の預金なども自行へ移してもらえる可能性があること、次世代の方との繋がりをつくれることがあげられます。
結びに
ここまで読んでいただくと分かると思いますが、私は銀行の遺言信託をお勧めしません。何故なら銀行の職員には転勤があり、本当の専門家はいないからです。
窓口の女性や融資課の営業マンも遺言信託を勧めてきますが、実はそれほど詳しくありません。しかし、営業にはノルマがあるので、必要ないと分かっていても高齢単身者の方に勧めます。
そうした営業で作成した遺言は酷い内容になっていることが多く(実際に何度も見ています)、解約をお勧めしています。銀行に遺言信託を依頼する前に本当に自分に必要なのか、セカンドオピニオンで近くの専門家に聞いてみてもいいかもしれません。
文責:庄田