義娘のための遺言作成とその執行
2020.10.13
今回は、義理の娘に財産を渡す遺言書の内容と、その遺言執行についての事例をご紹介します。
1.相続人である長男の妻Cより、義父が死亡したので、遺言書どおりの執行をお願いしたい旨の依頼がありました。遺言執行者は弊社(株式会社遺言執行社)です。
2.被相続人の属性
(1)89才の男性。配偶者(後妻)は10年前に死去。離婚した前妻との間に子供3人あり(長男A、長女B、亡二男)。二男は5年前に死去、独身、子なしです。
(2)法定相続人はAとBの2人。被相続人は長男夫婦(子なし)と同居していました。
3.遺言書の内容
(1)相続財産(預金のみ、不動産なし)の配分については、法定相続人2人と長男Aの妻Cが献身的に被相続人の世話を良くしてくれるので、Cを含めた3人に対して、相続財産を3等分の割合で渡す内容です。
遺言書上は、「3分の1の割合により」と表現します。
(2)遺言書の文章の書き方としては、法定相続人AとBの2人に対しては、「・・相続させる。」と書き、長男の妻Cに対しては、法定相続人ではないので、「・・遺贈する」と書きます。
(3)この遺言書には、祭祀主宰者指定の条文があります。この祭祀主宰者の指定は必ずしも入れる必要はありません。
あくまで遺言者の希望によるものです。ただし、この祭祀主宰者の条文を入れると、公正証書の場合は、別途11,000円と数千円の謄本代を公証役場に支払う必要があります。
この例文は以下のとおりです。
第○条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、上記長男Aを指定する。
(4)本遺言公正証書では以下のような遺言執行者の指定の条文があります。
第○条 遺言者は、この遺言の執行者として、次の者を指定する。
遺言執行者の表示 ・・・・
4.遺言の執行
(1)まず、戸籍の収集により、相続人の調査を行い相続人を確定します。
(2)全体の相続財産を把握する上で、財産目録を作成します。
(3)相続財産は預貯金、投資信託と有価証券だけであったため、各金融機関へ解約手続きを行ないました。
(4)以上の預貯金、投資信託、証券の詳細な金額について、事務手続き終了後に、執行完了報告書を相続人に提出し、葬儀費用等の負債、各種手数料、遺言執行の報酬と合わせて明細書を作成します。
特に、葬祭費については、市区町村から給付金が支払われる場合があるので確認します。
また、施設利用料や高額療養費なども清算金として返金があったり、支給対象となる場合があるので、その明細書等の書類を受領し確認します。
(5)遺言執行が完了したことの報告とその承諾を求めるため、「遺言執行完了報告書並びに承諾書」を法定相続人と受遺者に送付し、承諾書に署名後返信してもらいます。
5.養子縁組
(1)遺言書以外に、義娘に財産を渡す方法として、養子縁組があります。
つまり、被相続人と義娘が養子縁組をするのです。義娘は被相続人の正当な相続人になります。
(2)養子縁組自体は、養子縁組届出用紙に署名押印の上、養子となる者の戸籍謄本を添付して区役所に届け出れば、養子自身が区役所に行かなくても受理されます。