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包括遺贈の場合の遺言執行者の権限

2018.05.12

 

遺言執行者の権限

遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権限を有する(民法1012条)

当然、包括遺贈の遺言執行者も同様の権利義務を有することになりますが、特定遺贈の場合と異なり、権限については大きく制限があることもあります。

包括遺贈と一言にいってもその内容によって遺言執行者の成すべき具体的な行為も変わってくるため、その権限についても異なることになるからです。

特に、親族ではない第三者に対して包括遺贈する場合には、遺言作成時に注意しておかないと後々問題になる可能性があるため、考察してみたいと思います。

 

全部包括遺贈の場合の遺言執行者

包括遺贈とは、相続開始と同時に相続財産に属した一切の権利義務を承継することです。

よって、全部包括遺贈の受遺者は被相続人の財産に属した全ての権利義務を承継することになります。

全部包括遺贈の場合には、遺言執行者の権限は特段問題にはならず、特定遺贈と同様執行することになります。

不動産を含む包括遺贈の遺言に遺言執行者が存在する場合には、遺言執行者が受遺者と共に共同申請人となります。

なお、遺贈を原因とする不動産の移転登記をする場合、受遺者の単独登記は認められません。

不動産登記法は共同申請の原則を採っており、相続による権利移転の場合を除き、遺贈の場合は、共同申請の原則が適用されるためです。

余談ですが、相続人がいない場合の全部包括遺贈の遺言執行者は、相続人が存在しなくとも(遺言執行者は法律上相続人の代理人とみなされます)義務者として登記することができます。

 

割合的包括遺贈の場合の遺言執行者

割合的包括遺贈とは、例えば「遺産の2分の1をA、2分の1をBに包括して遺贈する」といった遺贈です。

割合的包括遺贈の場合、受遺者は、共同相続人や他の共同包括受遺者とともに共有関係になります。従って、最終的に財産を取得するには、必ず遺産分割協議を経て決定することになり、そのため、遺言執行者が存在しても、原則、登記や目的物の引き渡しを行うことはありません。

この場合、遺言執行者の権限は相続財産の保全や管理に限定されることになります。

第三者に対して包括遺贈する場合には基本的にこのような遺贈はしない方が無難でしょう。相続人と包括受遺者が親族であればまだしも、NPO団体などであった場合には遺贈先の団体に遺産分割という手間が発生し、また裁判等で迷惑が掛かる可能性もあります。実際、包括遺贈は受け取らない団体も多いようです。

 

債務清算や財産処分型の包括遺贈の場合の遺言執行者

相続債務を弁済した後の財産について、一定の割合で包括遺贈させるという場合や相続財産を処分して割合で現金を遺贈するといった遺言を実現するには、遺言執行者が存在する意味があります。

そのような遺贈の場合、遺言執行者が存在するときには、遺言執行者は相続財産を清算処分して、それを分配する権限を有することになります。

 

終わりに

遺言には、遺言者の死後の相続人間での争いを避けるという一面があります。割合的包括遺贈は割合だけを決めるため、話し合いが必要になり、帰って争いを助長してしまう可能性があることを認識し、第三者が絡む遺贈の場合には特定遺贈をお勧めいたします。どうしても包括遺贈にせざるを得ないときには専門家に相談しましょう。