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死後事務委任契約[①]死後事務委任契約とは

2017.05.11

 

人が亡くなるとどんなことをしなければならないでしょうか?財産に関することは相続の手続きがまず浮かんできますが、相続だけが死後の手続きではありません。

葬儀・埋葬、役所への死亡届などの提出、健康保険・厚生年金の資格喪失手続き、電気・ガス・水道・電話などの解約、そのほか、身近なもので言えば、クレジットカードの解約、FacebookやLineなどのSNSのアカウントの削除など、生前にはできない多くの事務手続きがあり、だれかがこれらをやらなければいけません。

ご家族がいれば、ご家族の方が一切の手続きをしてくれるでしょう。しかし、頼れる家族がいない、子どもがいない、配偶者が高齢である、親族が遠方に住んでいて手続きが大変である、という場合にはどうしたらいいでしょう?そのような場合、亡くなったあとのこれらの事務手続きを行ってくれるように生前に第三者に委任することができます。

このように委任したい人(委任者)が第三者(受任者)に、死後の事務に関する代理権を与えて、死後の手続きを委任する契約のことを「死後事務委任契約」といいます。

 

委任契約というのは、原則として委任者の死亡によって終了します。成年後見制度というものがありますが、これは生きているときの契約なので、死後のさまざまな手続きを行うことができません。後見制度は利用者が死亡すると終了し、今度は相続が開始しますので、勝手に費用を使うことはできず、葬儀や埋葬、医療費の支払いの代理などの費用を払ってもらうことができなくなります。

 

しかし、生前に当事者間の契約で「委任者の死亡によっても契約を終了させない」という合意をすることによって、委任者の死亡後に受任者が死後事務委任契約に記載された事務を行うことができるようになります。

 

この契約を結ぶことにより、その契約内容が不明確や実現困難であったり、委任者の相続人にとって履行負担が重過ぎるなどの特別な事情がない限り、相続人が委任契約を解除して終了させることはできないとされています。

 

遺言書に書いておけばいいのではないか、と思われる方もいるかもしれません。しかし、遺言に記載した事項で法律上の効力が認められるのは、次のとおりです。

  • 相続財産の処分や遺産分割に関すること

①虐待や重大な侮辱を与えた人を相続人から廃除する

②法定相続分と異なる相続分を指定する

③相続させる財産を指定する

④相続人以外の人に財産を与える

⑤遺言の内容を実現させる人を指名する

  • 人の身分に関係するもの

婚姻関係のない女性との間に生まれた子を自分の子として認める

  • その他

墓地・仏壇などの先祖のまつりごとを催すために必要なものを引き継ぐ人を指定する。

 

遺言で事務的な事柄の手続きについて記しても、法的な拘束力が発生しないため、内容の実現が困難になりますので、やはり死後事務委任契約を結ぶことが大切となります。