信託銀行に遺言執行報酬を払いたくない場合どうすればよいか
2023.12.28
前書き
信託銀行、都市銀行には遺言信託という商品があります。この商品は信託と名前がついていますが、全く法的に信託は関係なく、遺言書で遺言執行者(遺言の通りに手続きをする人)を引き受けますよ、という商品です。長引く低金利で銀行は手数料商売を重視しており、某メガバンクでは社長命令で各支店各担当者ごとに月に遺言何件とノルマが課されているそうです。
身近な方が亡くなった後で、知らないうちに遺言信託なるものを頼んでいて、でもそれが全く必要ない場合、相続する側としては高額な手数料を払いたくないというのが人情ではないでしょうか。その場合、どうすればよいか解説していきます。
遺言執行者への就任前の場合
まず、状況を大きく二つに分ける必要があります。すなわち、既に遺言執行者への就任をしているか否かです。就任する場合、遺言執行者は相続人に対して遺言執行者への就任をしますという通知をしなければいけないため、その通知で分かります。実務的には、いきなり就任通知を送るケースもありますが、それよりも一度相続人等の関係者を集めて遺言の内容を開披する場を設けることが多いです。これは、相続人間で揉め事などが有ったら就任をしないという選択をするためです。逆に言えば、「相続人間で揉めるよ!」「この遺言書には疑義があるよ!」と声を大にして言えば、それだけで銀行は就任を辞退する可能性が高いです。
既に遺言執行者への就任をしている場合
既に就任をしている場合、遺言執行者を辞めるためには家庭裁判所の許可が必要です。そうなると、銀行も簡単には辞任してくれません。辞任することで逆に法的に責任追及されてしまう可能性もあるためです。辞任ではなく家庭裁判所を通じての解任という手段もありますが、銀行が解任されるほどの不手際をすることはあまり期待できません。
また、銀行からすると高額な報酬も期待できるので、お願いしても辞任はしてくれません。では、どうすれば辞任してくれるのでしょうか。
遺言の無効と遺言執行者
例えば、遺言書が無効だから辞任して下さい、というのはどうでしょうか。実は、遺言無効の訴訟を提起しても、それだけでは遺言執行者を解任することはできず、したがって辞任もしてはくれません。しかし、単に無効の訴訟をするだけではなく、①無効確認訴訟に勝訴する蓋然性が高いことを証明し、②もし無視して遺言執行したら無効判決後に銀行に損害賠償請求をしますよ、ということまで通知すれば、金融機関もかなり怯みます。
後書き
実は、独居高齢者である程度の資産家には保険屋さんや金融機関の営業が結構な頻度で訪れます。高齢者の方も、寂しいのでつい話を聞いて、金融商品を買ったり、遺言書を作成したりします。全く必要のないものも多く、ほとんど詐欺ではないのか、と思うこともしばしばです。必要のない遺言信託を契約させられていたことが判明した場合、まずは専門家にご相談ください。自分で相談すると遺言執行を始められてしまう恐れがあります。
文責:庄田