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遺言執行者選任申立てについて

2023.07.10

 前書き

最近業務で遺言執行者の選任申立てをするかどうか迷った案件があったので、この機会に遺言執行者選任申立てをするべきケースと具体的にどのような手続きになるかまとめてみました。

 

遺言執行者選任申立てとは

遺言執行者選任申立てとは、遺言があり、その中で遺言執行者を選任していない場合又は遺言執行者が選任を辞退したり辞任や解任をした場合に家庭裁判所に対して、遺言執行者を選任して欲しいと申し立てることをいいます。公正証書でも自筆証書でも申立て可能です。自筆証書遺言で検認が終わっていない場合、同時に申し立てることができます。その場合、同日に期日が設けられることが多いため便利です。

 

以下概要です。

・申し立て権者 相続人、受遺者、債権者などの利害関係人です。

・申立て先 遺言者の最後の住所地の家庭裁判所となります。

・申立てに必要な費用 遺言書1通につき収入印紙800円分

・連絡用の郵便切手

・申立てに必要な書類

申立書

遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本(全部事項証明書)

遺言執行者候補者の住民票又は戸籍附票

遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し

利害関係を証する資料(親族の場合は戸籍謄本)

 

遺言執行者候補者について

申立てをする際に遺言執行者の候補者を記載することができます。

親族でも、司法書士などの専門家でも大丈夫です。基本的には候補者がそのまま選任されることが多いですが、相続人全員に対して裁判所からその候補者で良いか確認がされますので、親族間で争いがある場合などは全く関係ない第三者が裁判所の判断で選任されます。

 

遺言執行者を選任するべきケース

代表的なケースとしては、第三者への遺贈をする内容の遺言書があるのに、相続人からの協力が得られないケースです。実務上、これが全体の5割以上を占めているのではないかと思います。というのも、遺贈の登記は相続人全員が義務者になりますが、遺言執行者さえいれば不動産登記手続きがスムーズにできるので、登記手続きを求める裁判などをするよりもずっと簡便に済むからです。なお、受遺者が相続人の場合、令和5年4月1日以降は相続人が単体で遺贈の登記を申請できるようになったので、遺言執行者専任が不要になりました。

その他には、廃除などの身分行為など遺言執行者にしかできないことが遺言に入っている場合、選任が必要になりますが、実務上あまり見たことがありません。

 

終わりに

最近は相続登記の際に遺言書をお預りすると遺言執行者が選任されているケースが増えてきました。遺言を作成する際に遺言執行者を選んでおくということが一般的になってきたようです。もし選んでいなかったり、遺言執行者が亡くなっていた場合には家庭裁判所で遺言執行者の選任をすることも検討してみてはいかがでしょうか。

文責:庄田