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遺贈寄付についての遺言書

2022.10.03

遺言と遺贈寄付

「これでようやくゆっくり眠れます」

公正証書遺言を作成し終わったとき、遺言者様が満面の笑みで漏らすこの一言に、お力になることができて本当によかったと毎回幸せな気持ちになります。特にそうおっしゃられるのは、配偶者やお子様のいない方で、自分の財産の行方を心配されている方に多いのですが、今回作成のサポートをさせていただいたのは、お子様のいるAさんでした。

Aさん(配偶者様はご逝去)はお子様がいるにもかかわらず、団体Bに財産を遺贈寄付したいと申し出てくださいました。家族仲が悪く、いわゆる「争族」が起きそうなわけではありません。子どもには十分に渡してきたので、残った財産は社会の役に立てたいという「利他の心」をお持ちの方です。

弊社パンフレットに記載した「立つ鳥跡を濁さず」にいたく共感され、その言葉通りご自身の身辺の整理をされています。その中で、今までご夫婦で築き上げてきた財産の行方についても真剣にお考えになり、社会の役に立てることが一番であるという結論に達したそうです。ご自身で決めた通りの内容となった遺言書が出来上がり、清々しいお気持ちになっていらっしゃいました。

注意点

Aさんのように推定相続人がお子様の場合、気を付けなければならないのは、遺留分侵害額請求をされる可能性があるということです。

Aさんのとった対策は、生前にお子様にはある一定額を贈与することと、遺言書の付言事項にご自身の想いとともに、「遺留分の請求はしないでほしい」と記載することでした。付言事項には、私共にAさんの遺言書作成に対する想いをつづっていただいた手紙の内容をそのまま記載しました。というのも、それはAさんの語り口調そのもので、本当にAさんが伝えたいと思っていることをお話されているような文章だったからです。

ただ、遺留分の請求をしないように遺言書に記載することは意味のあることではあるものの、遺言者の要望にすぎず、法的拘束力はありません。万が一、請求してきた場合のことについては、遺言執行者である私共にこうしてほしいという希望を託されました。

 

Aさんのようにお子様がいる場合は、遺留分に関しては十分に検討する必要があります。相続人が残された遺言書に不満を感じ、トラブルに発展することも考えられるからです。もしもご家族と遺贈寄付についてお話できる関係であれば、生前にお子様や配偶者様、ご両親など遺留分権利者の方々にお気持ちを伝えて遺留分を放棄してもらう方法もあります。

 

ご自身の人生の積み重ねである財産の行先について、Aさんのように相続する人がいても社会に役立てたいとお考えの方は、ぜひ専門家である私共にご相談ください。

(高橋)