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遺言書の起源

2021.06.07

遺言書の起源と変遷

遺言書の起源は古く、奈良時代の養老令に遡るといわれています。養老令では生前に死後の財産の処分について決めることが認められていました。

平安・鎌倉時代は「処分状」で生前に財産を分けてしまったようです。江戸時代には、士農工商の内、士分は俸禄のため、財産について遺言を残す余地はあまりありませんでしたが(手紙としての遺書は除きます)、残る農工商についてはむしろ遺言を残すことが基本でした。

今よりもずっと「家」が大切だった時代、相続争いが起こらないように現代よりもずっと気を使っていたようです。遺言書は「書置」「書残」と称され、五人組等の町内に寄託していたようです。

家督相続と遺言

明治時代に入ると旧民法が制定され(明治31年7月16日から昭和22年5月2日)、長子の「家督相続」制度が作られ、ここで一度遺言書は廃れてしまいます。長子が財産も家督もすべて相続するのであれば、遺言は必要なくなるので当然といえば当然です。

現代の遺言

そして現代、遺言を書く人は年間に10万人を超えています。これは公正証書遺言だけの数字ですので、自筆証書遺言も含めるともっと沢山の数になることと思います。歴史的な経緯からも分かるように、遺言には財産的な面と家訓等の心情的な面があります。民法では財産的な面については規定していますが、心情的な面については付言事項といって、法的な効力は無いけれど書くのは自由、というスタンスです。遺言の件数と同時に相続争いの件数も増加している現代では、財産と心情の両面から遺言は必要とされています。