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遺言書がある場合の遺産分割協議

2019.01.13

遺言書の存在を知らないまま遺産分割をしてしまった場合、また遺言書の存在を知った上でそれと異なる遺産分割をした場合、遺言書の効力はどうなるのでしょうか。実務上、遺言書が存在しても様々な事情で遺産分割をすることは間々あります。実例も交えてご紹介します。

 

遺言書を知らなかった場合

遺言書の存在とその内容を知らずに遺産分割協議をした場合、相続人が遺言書の内容を知った上であればその遺産分割協議の判断をしなかったであろうと考えられるときは、遺産分割協議の意思表示は無効であり、遺言書の内容のとおりに相続がなされることになります。

例えば、母親が被相続人、子供2名が相続人で、母親が亡くなり、子供2名の間で2分の1づつと遺産分割協議をしたが(仲が悪いとする)、実は遺言書があり、一方の子供には虐められたのでもう一方の子供に全て遺贈するとされていた場合、通常であれば遺贈を受ける側の子供は遺産分割協議に同意しないと考えられるため、無効となる可能性が高いです。

実務上、遺産分割協議の後で遺言書が出てきた場合、争いになる可能性が非常に高く、裁判になってしまいます。遺言書の保管や事付をどうするか、生前から考えておく必要があります。

 

遺言書の内容を知っていた場合

相続人の一部の人間に対し遺贈する旨の遺言書が存在する場合に、当該相続人が敢えてその内容と異なる遺産分割協議をした場合、遺贈の一部または全部の放棄がされたものと見なされ、遺産分割協議は有効であるとされています。

実務上、遺言書の内容を知りながらそれと異なる遺産分割協議をすることはよくあります。例えば、一部の相続人に全財産を遺贈するといった遺留分を無視した遺言書で、遺留分減殺請求をせずに相続人間で遺産分割協議をして平和裏に相続することは非常に合理的です。

 

終わりに

包括遺贈の場合、遺言書があっても具体的にどう遺産を分けるのかは遺産分割協議が必要となります。これはいい面もあり、悪い面もあります。不動産がある場合等引き継ぐ人を指定したい財産がある場合は、一部の財産について特定遺贈とし、残りを包括遺贈にするなど工夫が必要です。遺言執行者は条項ごとにすることも可能なため、特定遺贈には受遺者を遺言執行者としておくと受遺者のみで手続きができて楽なケースがありますので、ご検討ください。