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成年養子縁組の利用法②

2018.09.27

前半は制度の概要とその効果について論じてきましたが、後半は成年養子縁組における問題点に焦点を当てていきます。

 

養子制度の乱用

独身の高齢男性宅に、よく分からない女性が入り込み、いつの間にか養子になっていた、といった話がそこかしこで聞かれます。実際、私も司法書士として相続案件を受任する中でそれに近い案件を扱ったことがあります。これは高齢者に対し、交際を持ちかけたり、親切心を装って近づき、相続財産を承継することを意図して行われる一種の詐欺のような行為です。

そのような事案では、養子縁組が法的に無効といえるのでしょうか。民法では養子縁組の無効原因を「当事者間に縁組する意思がないとき」としています。縁組する意思とは、①縁組意思が欠けているか、②意思能力が欠けているか、の2点に分かれます。

 

①縁組する意思の欠如

養子縁組の意思とは、「真に社会通念上親子であると認められるような関係を創設しようとする意志」のことであると判示されています。

⑴隣人の子供を養子にしたものの、面識がある程度で交流は全くなかったケース、⑵知り合って2か月後に養子縁組をしたが、その後同居したものの養父の看護や世話を一切しなかったケース、などが縁組意思がないものと判示されています。

一方で、相続税の基礎控除の増加や遺留分の減少といった財産的な目的でされた養子縁組が、それだけを持って直ちに無効となるわけではないという判決もあります。

 

②意思能力の欠如

養子縁組における意思能力の欠如とは「養子縁組を成すについて求められる意思能力ないし精神能力の程度は、格別高度な内容である必要はなく、親子という親族関係を人為的に設定することの意義をごく常識的に理解し得る程度」とされています。

判例では、長谷川式簡易検査で意思能力の判断をしたものが複数ありますが、認知症の疑いがあっても、養子縁組の経緯や当時の親族関係、環境、病気の状況など複合的創造的に判断されます。

 

終わりに

養子縁組という制度は、その生じさせる効果に対してあまりにも簡易に手続きができると考えられます。これは婚姻についても同様ですが、本人確認の徹底、裁判所の関与などによってチェック機能を創設するべきです。役所や裁判所にその予算も人的余裕もないのであれば、民間の有資格者を利用するなどして日本古来から続く養子縁組制度というものをもっと大切にしていきたいものです。