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遺言⑦+遺言信託とは

2017.11.24

遺言信託とは、主として死後の家族の生活費の確保や社会福祉などの公益目的、お墓の管理費の支払いの継続等に利用することができる、遺言でする信託のことです。

以下詳しく説明していきます。

 

 

信託とは

信託とは、委託者が受託者に対し、自己の財産その他の処分をし、受益者が信託目的に従って、受益者のために信託財産の管理・処分をすることをいいます。

信託は生前に委託者と受託者で契約することもできますし、遺言によって設定することもできます。遺言による場合には、遺言者の死亡により財産が受託者に移転し、信託が開始します。

なお、現在の信託法は平成19年9月30日に施行されたもので、以前の信託法から全面改訂されています。

 

 

遺言信託の要件

遺言には最低限、①信託目的、②信託財産、③受託者、④受益者、⑤期間等を記載します。

 

①信託目的

信託はある一定の目的に従って行われるものですので、受託者が何をすべきなのか基準を明確にしておく必要があります。基本的にはどんな目的でも可能ですが、訴訟行為を主たる目的とする信託は禁止されています。例えばですが、弁護士を受託者として、ある人を訴えることを目的とし、余ったお金は親族で分けるというような信託です。

 

②信託財産

信託財産は、被相続人の死亡時には確定されている必要があります。

性質上金銭的に評価できるものである必要がありますが、著作権などの無形財産や債務でも信託財産とすることが出来ます。

 

③受託者

一般に受託者には財産の管理能力のある信頼のおける人間や法人を指定します。不空数人を指定することもでき、相続人の中から指定することもできます。未成年者または成年被後見人、被保佐人は受託者となることができません。

生前に契約する信託とは異なり、遺言信託ではある人を受託者にしていするのに同意は要りませんし(通常はもちろん同意してもらいますが)、受託者を定めないこともできます。その場合には利害関係人の申し立てによって裁判所が選任します。

 

④受益者

受益者とはその名の通り、信託によって利益を受けるもので、信託契約の重要な要素です。しかし、新しい信託法では、受益者の定めのない信託をすることが出来ます。これを目的信託といいます。例えば、遺言者の飼っていたペットを死後も受託者に面倒を見てもらうといった信託が考えられます。

 

⑤期間

受益者を定めない信託は20年を超えることが出来ませんが、その他の信託には制限はありません。

 

 

◇実務+α

遺言信託をすると、信託財産は遺言者の死亡時に受託者に帰属するので、遺産分割の対象にはなりません。ただし、遺留分を侵害している場合にはその限度で遺留分減殺を受けることがあるということになります。