死因贈与とは
2017.08.17
死因贈与とは、①贈与者(贈る人)の死亡によって効力が生じる、②贈与契約です。
贈与契約とは、ある財産を「あげます→もらいます」という意思が合致すると成立する契約のことです。
贈与契約の効果が発生する時を、贈与者の「死亡」によるとするので、死因贈与といいます。
死因贈与は財産を贈る人の死亡によって効果が発生するという共通点から、遺贈(遺言によって財産を贈ること)に関する規定が多く準用(適用)されます。
しかし、どの規定が準用されるかは解釈に委ねられており、争いのある点もあります。遺贈と比較しながら、考える必要があります。
共通点
死因贈与はその性質上準用の余地がないものを除き、遺贈に関する規定が準用されます。
規定が準用されるか否かについて問題のある点を4つあげます。
1 受贈者(財産をもらう人)の死亡
遺言は、遺贈者が死亡する前に受贈者が死亡した場合、効力が生じないとされています(民法994①)。死因贈与についてこの規定が準用されるかは争いがあります。裁判では結論が分かれており、かなり大切な部分ではありますが結論は出ていません。契約書に死亡した場合の取り扱いを記載しておいた方がいいでしょう。
2 撤回
撤回とは、贈与するといった意思表示を将来に向かって無効とする行為です。要するに、やっぱりあげない、ということです。遺贈に関しては自由な撤回が認められているため、死因贈与においても撤回は基本的には認められます。基本があれば例外もあり、負担付き死因贈与(受贈者に何らかの負担をしてもらう契約方式)においては、受贈者が負担の全部またはそれに類する程度の履行をしている場合には、特段の事情がない限り認められないとする判例があります。
3 遺言執行
遺言執行者の選任についての規定が準用されるかについては争いがあります。裁判例も肯定するもの、否定するものに分かれています。個人的には、遺言執行者とは受遺者の利益の保護と遺言内容の実現のための制度であることから、準用すべきであると考えます。
4 遺留分
遺留分を侵害する死因贈与がされた場合、遺贈の場合と同様に、遺留分権利者を保護する必要があるため、遺留分減殺請求の対象となります。
相違点
1 方式
遺贈は法定の方式に従う必要があります(自筆する、公正証書を作る等)。死因贈与は贈与契約の一種であり、遺言の方式に従う必要はありません。書面を作らない死因贈与も法律上は有効です。しかし、書面によらない贈与は履行の終わった部分を除き、いつでも撤回できます。
2 能力
遺言は15歳になると単独で出来ます。遺言は身分行為にもかかわるためは成人になる前の15歳から認められます。一方、死因贈与は契約ですので、未成年者は親権者の同意が必要です。
3 放棄
死因贈与は契約ですので、遺贈のように相続の承認、放棄に関する規定は準用されません。
まとめ
死因贈与は、遺贈と違い、厳格な方式に従う必要はありません。
また生前に確実に財産が渡るようにしておけることが最大のメリットです。
半面、税金の面では不利な部分もあります。
書面によらないことも可能ですが、トラブルの基になりかねないため、弊所では可能な限り、公正証書での作成をお勧めします。